開発秘話取材-2
「自分達なら何ができるか」という想いから生まれた
ネットキャッチャー JDC-10

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世の中の動向から安全の需要を読み取る

後藤勝代表取締役は常日頃、社員に向けて「世間に対して浅く、広く知見を広めなさい」と伝えているそうです。
「我々の仕事は、社会の安心、安全に寄与すること。日々の生活の中に埋もれている「ひょっとして」という発想が、世の安全に役立つことは少なくありません」と後藤潤一郎専務取締役は付け加えます。
そのため、新聞やニュースで目にしたこと、耳にしたことを手がかりに新たな製品が生まれることも少なくないそうです。「ネットキャッチャー JDC-10」もそんな経緯から生まれたものの一つです。

「ドローンが話題になった時、うちの会社ならどんな安全対策を講じられるか。今ある刺股の改良や高機能化では十分な効果を発揮できないなら、新しいものを作ろうと」(後藤社長)
そこで考えたのがネットを発射する形の「ネットキャッチャー JDC-10」の原型。他社にも類似品はあったものの屋内用のため射程距離が短いこと、さらに使い捨てであるなどの問題がありました。
「商品としてはそれで良いのかもしれませんが、使用する方のことを考えると、我々としては改良の余地があったと判断しました」と後藤専務は語ります。

こだわりを実現するためにミリ単位で調整

まず考慮した点が射程距離。従来品の目の前に向けて4~5mでは上空のドローンに向けて発射した際には、重力の関係で当然、それ未満の距離に落ち込んでしまいます。そこでジェイウィンでは本体のヘッド部分や発射源を改良し、約8~12mまで射程距離を伸ばすことを実現しました。
「通常、この手の発射源には炭酸ガスが使われていますが、私どもは窒素ガスを使用しています。この場合は寒い場所でも使えるメリットがあります」(後藤専務)
しかし、このこだわりを実現するにも、製品化まではいくつも課題があったそうです。

まず、窒素ガスボンベそのものが世に出回っていなかったこと。
「どうしても窒素ガスボンベがほしかったけど、試作品で用意してもらうのにもボンベメーカーの方はなかなか首を縦に振らない」(後藤社長)ため、試作品用にもかなり大量のオーダーが必要だったとのこと。
また、ボンベに穴を開けるニードルの大きさや、ニードルがボンベに差し込まれる角度、深度は何度も試作を重ねたそうです。
「ガスの圧力を効率的に発射エネルギーに変える機構こそが、長距離射程を実現しています。ここが“ウチならではの技術”です」(後藤専務)

実践を考えて“繰り返し使える”仕様に

もうひとつ、「ネットキャッチャー JDC-10」を作る上で後藤社長、後藤専務が絶対に実現したかった構造があります。それは“繰り返し使えること”。
「従来品は基本的に使い捨て。繰り返し、練習で使えなくては意味がないという事は話していました」と話す後藤専務。基本的にガスボンベを交換すれば、ネットの物理的な故障などがない限り、無制限で利用できることは「ネットキャッチャー JDC-10」の大きな特徴と言えます。
実際に導入した現場からも、繰り返し訓練できたので、実践で役立ったという声が届いているそうです。

「ネットキャッチャー JDC-10」は伊勢志摩サミットでも導入されるなど、そのクオリティの高さは折り紙付き。
オーダーありきではなく、自分達なら何ができるか、という疑問から走り出し、さらには使用する側の立場から「繰り返し利用できなくては練習できない。練習できなければ、いざという時に使えない」という部分まで見込める確かな眼。
この製品からも、ジェイウィンが商品としてではなく、まずは使用する側の立場、つまり安心、安全を第一に考えている姿勢と、それを形にできる確かな技術と経験が見て取れます。